アジア太平洋 · トレンド分析

2027年のヒューマノイドロボット、注目すべき7つの変化

2026年にはヒューマノイドロボットの生産が拡大した。しかし、出荷台数は、実用的な成果を上げることが実証された現場導入の数とは異なる。2027年に問われるのは、より多くのロボットが、安定して対価に見合う仕事を担えるかどうかだ。来年の業界を左右する7つの動向と、アジア太平洋地域への影響を展望する。

製品写真に写るAgility RoboticsのヒューマノイドロボットDigit 5
メーカーの製品写真に写るAgility RoboticsのDigit 5。2027年の提供開始予定は今後の計画であり、すでに展開が完了したことを示すものではない。写真:Agility Robotics。

生産台数から価値の実証へ

この1年、目を見張る数字が相次いだ。2026年上半期だけでヒューマノイドロボットの出荷台数は数万台に達し、Unitreeは株式市場への上場を果たした。ロボットの価格は大きく下がり、アジア各地で新たな工場も稼働に向けて動き出した。長期的な出荷予測には依然として大きな開きがあり、定義や普及に関する前提に大きく左右される。ただ、議論の焦点は、何台つくれるかから、どれだけ役に立つ仕事をこなせるかへと移りつつある。以下は2027年に向けた編集部の見通しであり、確定した予測ではない。

商用製品は発表から納入へ

複数のメーカーが、2026年に発表した計画を2027年の納入につなげようとしている。ただし、開発や現場導入の遅れで予定がずれ込む可能性もある。Agility Roboticsは、2027年上半期にDigit 5の早期提供を始め、年末までに一般販売する計画だ。Teslaはフリーモント工場で生産を拡大したうえで、2027年にOptimusを外部顧客へ販売することを目指している。一方、同ロボットは現時点で一般的な作業をこなすには課題が残る。1Xは、家庭向けヒューマノイドの生産能力を2027年末までに年間10万台超へ引き上げる見通しだ。OpenAIのCEOは、同社がヒューマノイドを開発し、2027年にデモを披露する見込みだと述べている。新製品の発表が続く一方で、延期もあり得る一年になりそうだ。

器用な操作とエッジAIが主戦場に

歩行やバランスの能力は向上したものの、人が行き交う場所や起伏のある環境で安定して動くのは依然として難しい。器用な物体操作と、ロボット本体での判断も同じくらい重要な試金石になりつつある。業界アナリストは、エッジAIによる演算能力と器用な操作が、2027年に商用試験を通過するロボットを左右するとみている。注目したいのは、触覚センサー、自由度が20以上あるロボットハンド、そしてクラウドに頼らず反応できる高性能なオンボードコンピューターだ。

実環境の稼働データが競争力に

ロボットは経験から学ぶが、質の高い実環境データは不足している。中国企業が価格を下げてロボットを現場に投入していること、データ収集施設が多数のヒューマノイドを購入していること、基盤モデルの開発企業がロボットメーカーと提携していることは、いずれもその事情を反映している。2027年には、実際の現場で最大規模のロボット群を運用し、そこから効果的に学ぶ手段を持つ企業が、模倣しにくい優位性を得るだろう。

地域ごとに異なる戦略

製造規模と政策目標を背景に、中国は引き続き生産台数で先行する可能性が高い。上海は2030年までに工場で使うヒューマノイドを10万台にする目標を掲げているが、これは目標であり、現在の導入台数を示すものではない。日本は2040年までにAIロボット1,000万台を目指す計画の一環として、介護、小売、病院での試験導入を拡大する。韓国では、産業界、大学、政府の連携組織が国産のロボット基盤モデルに取り組み、自動車工場や造船所へのヒューマノイド導入を目指す。一方、米国が中国製ヒューマノイドの新機種に輸入制限を設けることで、米企業は安全性、高付加価値の作業、国内サプライチェーンに重点を置くようになるだろう。

安全とセキュリティのルール整備が進む

2026年に発生したHugging Faceのインシデントや、AIエージェントをめぐるほかの侵害事案を受け、政府は現実世界で行動するAIに目を向けている。ヒューマノイド型産業用ロボットを対象とする初の国際安全規格、ISO 25785-1の策定が進むと見込まれる。韓国の自律システム向けAIセキュリティガイドラインのように、各国の指針も増えるだろう。シンガポールやオーストラリアなどが主導する形で、事故報告の要件も整備される見通しだ。導入企業は性能だけでなく、安全性、サイバーセキュリティ、データ保護を証明するようベンダーに求めるようになる。

新たなビジネスモデルが導入の壁を下げる

改善が続く技術に対して、購入費用の全額を一度に支払いたい企業は多くない。2027年には、ロボットのサービス利用、月額契約、日単位のレンタル、複数社での共同利用が広がるだろう。ロボット導入を対象とする保険商品も増える見込みで、日本の保険会社はすでに提供を始めている。家庭向けロボットのサブスクリプションや、専門家による遠隔サポートは、家庭での初期導入を後押しする。中国では、1日単位のレンタル料金がすでに大きく下がっている。

働く人への配慮が重要に

ヒューマノイドが職場に加わるにつれ、周囲で働く人々にも注目が集まる。企業には、従業員をロボットの監督者、トレーナー、保守担当者として再教育することに加え、安全や雇用への不安を和らげる取り組みが求められる。日本企業が2027年4月にヒューマノイドを名前のあるチームメンバーとして「採用」する計画などは、組織がチームのあり方を見直していることを示す。最も成果を上げる現場導入は、ヒューマノイドを人員削減の手段ではなく、単調で汚れやすく危険な作業を担う道具として位置づけるものになるだろう。

2027年に注目したいこと

  • 実証された導入データ:デモ映像だけでなく、実際の現場での稼働率、成功率、人の介入回数を確認する。
  • ロボット1台の価格だけでなく、有用な作業1時間あたりのコスト。
  • 特定の産業作業を対象に、数百台または数千台をまとめて発注する大型案件の第1号。
  • 安全規格の進展と、保険会社によるリスク評価・保険料設定。
  • 業界再編。投資家が有力企業に資金を投じる一方、小規模メーカーは合併や撤退に向かう可能性がある。

アジア太平洋地域の企業にとって、2027年は見守るだけの段階から実践へ移る年だ。目的を絞った試験導入を行い、データを集め、人材のスキルを育て、パートナーを慎重に選ぶ必要がある。ヒューマノイドの時代は一気に到来するわけではない。しかし、早くから学ぶ企業は、その時が来たときに備えられる。