中国の工業情報化部(工信部)国務院国有資産監督管理委員会(国資委)は2026年6月10日、2026年末までに少なくとも1万台のヒューマノイドロボットを商業環境で稼働させるという共同指令を発表した(Caixin Global)。この施策は、単なる目標設定にとどまらず、国有企業が主導するロールアウトを義務付ける拘束力を持つ行政指示として位置づけられている。

指令の背景には、米国や欧州の競合各社に対する技術的優位性の確立という戦略的意図がある。MIITは過去2年間でヒューマノイドロボット関連の補助金・規制枠組みを相次いで整備しており、今回の指令はその集大成とも言える。SASAC傘下の国有製造企業が試験導入のホスト役として優先指定される見込みだ。

1万台という数字の意味

1万台という目標は、現時点での世界的なヒューマノイドロボットの累計商業稼働台数を大幅に上回るとみられる。業界調査によれば、2025年末時点での全世界の商業導入数は数百台規模に留まっており、中国が掲げる数字はその数十倍に相当する。鉄鋼・自動車・電子機器の各製造セクターが最優先の展開先として挙げられており、ユニツリー・ロボティクスUBTechAgiBot(智元)といった主要国内メーカーは政府調達案件への参入機会を得る可能性がある。

APACのロボット産業への波及効果

この政策発表は、韓国の「K-AIヒューマノイド計画」やシンガポールの民間投資と並行して進んでおり、APAC全域でのヒューマノイドロボット競争が本格的な国家間競争の様相を呈し始めていることを示す。サプライチェーンの観点では、アクチュエータや力覚センサーを供給する日本や韓国のメーカーにとっても間接的な需要押し上げ要因となりうる。

ただし、実現には複数のハードルが残る。現場環境への適応、安全規格の整備、熟練オペレーターの育成など、スケールアップに伴う課題は多い。専門家の間では、「1万台」という数値が実証実験段階のユニットを含む広義の定義で計上される可能性も指摘されている。政府の進捗管理の透明性と、民間セクターへの技術移転の仕組みが今後の焦点となろう。

ソース
Caixin GlobalMIITSASAC